2015年08月20日

遺産分割や共有物分割での経済的利益とは

ベネッセの件は,淡々と進んでいます。
また,次回期日が来週にあるので,その時にご報告いたします。


さて,たまにはベネッセ関連以外のお話。弁護士報酬のお話です。
とある事件で裁判官から疑問を呈され,
いろいろ調べたのですが,インターネット上ではあまり書かれておらず,
書籍でやっと納得する解が出たので,ご紹介します。


そもそも,紛争解決型の弁護士の費用(支払う報酬)は,
着手金・成功報酬制と時間制(タイムチャージ)に大きく分けられると思います。

タイムチャージは,1時間いくらで,(何人×)何時間かかったかで費用が決まります。

着手金・成功報酬型は,事件の「経済的利益」の○%とかで決まっています。
(参照:http://kasai-law.com/cost/index.html

それで,この「経済的利益」というのは,損害賠償などだとわかりやすくて,
・損害賠償請求する場合
何円請求するか(着手金計算時),何円勝ったか・受け取ったか(成功報酬計算時)
・損害賠償請求を受けた場合
何円請求されたか(着手金計算時),相手の請求から何円減額したか(成功報酬計算時)
で,決まります。

ここで,問題なのは,持分・相続分(相続割合)に争いのない共有物分割・遺産分割のときです。

例えば,全部で1000万円の不動産や遺産があって,2分の1ずつの割合で持っていることは,互いに争いがない。
これを,どう分けるかについて,弁護士に依頼し,無事に分けて,2分の1を現金などで得られたとして,
「経済的利益」はいくらなのか,という問題です。

第二東京弁護士会の旧報酬規定やうちの事務所や多くの法律事務所の弁護士報酬基準でも,
経済的利益を「対象となる持分(相続分)の時価の3分の1の額」と定め,着手金及び成功報酬の算定基準としています。

これは何故でしょうか。
互いに持分を認めているのだから,それを分けて受け取っただけだから,経済的利益は0ではないのか,という疑問が当然ありえます。

しかし!
持分に争いのない共有物分割請求事件(遺産分割請求事件)において,
訴訟手続き等で確定されるもの(得られるもの),すなわち経済的利益は持分ではなく,
持分の具体化なのです。
当然確定前でも依頼者は持分を有していますが,これは使い勝手が悪く,
それを具体化するのが,分割請求事件なのです。

具体化(分割)された場合の経済的利益として,
共有から単独所有になるので,実際に使用権を得るということで,占有保持の訴えとパラレルに考え,
(占有権も所有権とは別に使用する権利)
3分の1の額としているのです。

したがって,依頼者が持分を既に有し争いのない共有物分割請求事件においても,
訴訟手続き等により,具体的に持分を確定したときに,
確定した持分の3分の1を経済的利益となるので,
着手金・成功報酬が発生するのです。



参考文献:日本弁護士連合会調査室編著「弁護士報酬規定コンメンタール」(第1版)
posted by まんさく at 17:06| 東京 ☀| 法律豆知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする