2011年11月21日

相続基礎知識3(特別受益と寄与分)

1.基本

@遺言がある場合には,それに従う(原則は被相続人の意思,例外は遺留分
→寄与分は問題とならず,特別受益は遺留分減殺請求の場合に考慮する。

A遺言がない場合は,法定相続分(民法900条)となる。
※預貯金など(可分債権,✕現金)は当然に相続分で分割され,各相続人に帰属するが,実務的には,相続人全員の同意がない場合,銀行等は訴訟をしないと支払ってくれない(訴訟はすぐ終わる)。

次に問題となるのが特別受益と寄与分。

特別受益と寄与分は,相続財産の総額・内容や相続人との関係などの様々な事情を考慮し,相続人間の公平という観点から,結論を出すので,一般的な基準は難しく,個別具体的に判断するしかない。

相続財産についての争いは,任意の話合いでまとまらなければ,家庭裁判所で遺産分割調停→審判という流れ。


2.特別受益とは

相続人が被相続人から死んだ時や生前に結婚・養子縁組などで特別にもらった財産や,生活の資本として特別にもらった財産のこと
日常的な些細な贈与は含まれず,特別にもらった財産であるが,財産の総額,贈与された物の種類・価格,贈与の目的・趣旨など総合的に判断する。


特別受益は,相続財産とみなして,その価額(価値)を相続財産に加える
(民法903条1項)

もらった物をそのまま戻すのではなく,相続開始時(通説)の価値(金額)だけを持ち戻す。

もらった財産が,相続分と同じか超えていたら,相続しない。
(民法903条2項)
  
超えていても,返却する必要はなく,相続分が0になるだけ。
ただし,被相続人が,生前の贈与や遺贈も相続分に加えないとか,さらに相続させたいなどの意思を示したらそちらが優先。(遺留分の場合は別。)
(民法903条3項)

明示的でなく黙示的であれば,それを裏付ける事情が必要。

もらった財産を,失くしたり,使用で価値が増減しても,相続開始の時に,もらったときのままの価値とみなす。
(民法904条)

【生命保険や遺族年金】
特定の相続人が受取人となっている死亡保険金(最高裁判例あり)や遺族年金は,特別受益とならないのが原則。ただし,あまりにも高額であったり,相続財産の大半を占めたりするものは,事案によって遺産分割の公平の観点から,特別受益に準じて取り扱うこともある。


3.寄与分とは

相続人が,相続開始前に,被相続人の仕事を手伝ったり,被相続人の介護などをして,被相続人の財産を増やしたり,減らないように維持するなど,特別に貢献した割合

通常の夫婦間,親子間,親族間でなされる協力の程度を,超えていなければならず,かつ遺産の増加又は維持に貢献しなければならない。

寄与分は,法定相続から除き,寄与した人に寄与分を加えて相続分とする。寄与分は相続人の協議で決める
(民法904条の2 1項)

  相続人の協議がうまくいかなければ,遺産分割協議(又は相続の開始後認知された者の価額の支払い)の審判の場合に,相続人の請求で家庭裁判所が決める。
(民法904条の2 2項・4項)
 
請求(申立)がないと,寄与分を裁判所は判断できない。寄与分だけの申立はできない。
  寄与分は相続開始時の財産から,遺贈の額を引いた残額を超えることはできない。
(民法904条の2 3項)。
   
相続財産以上の貢献をしていても,超えた分については,寄与分としては請求できない。民法上の不当利得などでは請求の余地はある。


【家事・家業従事・療養看護の寄与】
 
なかなか認定が難しい。ほとんどが,1,2割程度。
特に療養介護は,通常の親族間でも協力があるため,低額,調整程度。

 基本的な考え方は,
   日当・介護報酬基準を基礎とした相当額×日数×裁量的割合
で計算される。


☆具体例☆
・被相続人(亡くなった人)Aさん

・Aさんの妻Bさん,Aさんの子,Cさん(男)・D(女)

・遺書はない(法定相続分,B:1/2,C:1/4,D:1/4)。

・遺産総額は現金1500万円(後述のCさんがもらった500万円は除く)。

・Bさんは寝たきりになったAさんを献身的に介護などした。

・Cさんは,サラリーマンであるが,Aさんのために休みの日はAさんの自営業の仕事を手伝っていて,Aさんから「私が死んだら,店の資金の500万円はお前がもらいなさい」と言われて,既にもらった。

・Dさんは,一昨年結婚したときに,Aさんから1800万円の家をもらった。家は,相続開始時には,1200万円に値下がりしていた。


まず,Cさんのもらった500万円やDさんのもらった家は相続財産とみなすが(これが特別受益),家を相続財産に入れるのではなく,家は相続開始時には1200万円の価値しかないので,500万円と1200万円を遺産総額1500万円に足す

1500+500+1200=3200(万円)

次に,Bさんの行ったAさんの介護や,Cさんの行ったAさんの家業の手伝いが特別の寄与にあたり,寄与分となる。
仮に,それぞれ100万円,300万円とすると,3200万円から,それぞれを引く(※)

3200−100−300=2800(万円)

これを法定相続分でわけると
          特別受益 寄与分
A:2800×2分の1     +100= 1500(万円)
B:2800×4分の1− 500+300=  500(万円)
C:2800×4分の1−1200    = −500(万円)

そうするとCさんはマイナスになるので,相続分はなし(返却もしなくて良い)
AさんとBさんは1500:500=3:1で分割する。

よって,遺産の1500万円は
A:1125万円
B: 375万円(+金庫の500万円)
C:  0   (家そのまま) 
            でわける。


※寄与分の算定

単なる介護では寄与分の主張は難しい,長期間,寝たきり状態を献身的に介護して,初めて1割程度の寄与分が認められる
家業の手伝いも,無償(又は低額)で長期間行い,財産を増やしたり維持したりといえるほどに,貢献しなければならない。
posted by まんさく at 16:15| 東京 ☀| 法律豆知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする