2020年07月17日

民法(相続分野)改正のポイント


自筆証書遺言保管制度も始まり、ほぼ民法改正が施行となりましたので、相続分野をまとめてみました。

1 配偶者の居住権保護

(1)配偶者居住権(長期)

@被相続人の配偶者は,被相続人の所有であった建物に,相続開始時に居住していた場合

A遺産分割で,配偶者居住権を取得するとされたとき

        or

 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき

その居住建物の全部に付き無償で使用収益をする権利を取得する(1028条1項)

原則終身(別の定めも可)(1030条)

・登記請求権(対抗要件にもなる)(1031条)や、妨害排除請求権(不法占拠者を追い出せる)あり

用法遵守義務(これまでの使い方に従う)や善管注意義務(賃貸物件のイメージ)を負う

・譲渡できない。

・増改築や第三者に使用収益させる場合には所有者の承諾が必要

・通常の必要費は負担し(修繕可能)、特別の必要費(災害などによる修繕費)や有益費は現存の場合に、所有者の選択で支出額か増加額(有益は相当期間を裁判所が許与できる)


例外

被相続人が相続開始時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合は除かれる(1028条1項但し書き)


審判でも配偶者居住権の取得が認められる(1029条)。

 共同相続人間で合意

  or

 配偶者の希望の申し出,所有者の不利益を考慮してもなお配偶者の生活維持のために特に必要があるとき



(2)配偶者短期居住権


@配偶者が相続開始の時に遺産に属する建物に居住していた場合

遺産分割が終了するまでの間など最低6ヶ月は,無償でその居住建物を使用できる

・期間は、

 遺産分割の場合は、

  居住建物の帰属が確定した日か相続開示から6ヶ月を経過した日の、いずれか遅い日

 それ以外の場合は、

  居住建物取得者が消滅の申し入れをした日から6ヶ月を経過した日まで

用法遵守義務や善管注意義務、譲渡できない、費用の負担などは(1)と同じ

・登記できず、対抗要件なし(建物を譲渡されたら出ていかなければならない)

・相続開始前に建物の一部のみを使用してたら、その部分のみ((1)なら建物全部)

・使用のみ(収益=貸せない)


配偶者居住権を取得したら消滅する。



(3)持戻し免除の意思表示推定


@婚姻期間が20年以上の夫婦間

A居住用建物又は敷地の遺贈又は贈与

持戻し免除の意思表示があったものと推定する(903条1項、3項)。特別受益の対象とならない。


持戻免除の規定は,配偶者居住権の贈与,遺贈に準用される(1028条3項)



2 遺産分割前の分割や一部の分割


(1)預貯金の払い戻し制度


預貯金債権の3分の1×法定相続分(金融機関ごとに上限150万円)は、単独で取得できる

(遺産分割調停中に、家庭裁判所に申し立てると、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により、他の共同相続人の利益を害しない限り、預金債権の全部又は一部を仮に取得できる制度もある)


(2)一部の分割


他の共同相続人の利益を害するおそれがなければ、遺産の一部の分割でも家庭裁判所に請求できる。


(3)分割前の遺産の処分


遺産分割前に遺産が処分された場合、共同相続人全員の同意又は当該処分者が共同相続人であれば、遺産とみなせる(906条の2第1項)。

処分をしたのが共同相続人であれば、その者の同意は不要(同条2項)。



3 遺言制度


(1)自筆証書遺言の方式緩和


自筆証書遺言でも相続財産の目録については自書でなくてもよいが、各頁(両面ならその両面)に署名・押印(同一の印鑑)が必要。目録の加除や変更は本文と同じ


(2)自筆証書遺言保管制度【遺言書保管法】


法務局で自筆証書遺言を保管・管理、遺言書情報証明書や遺言書保管事実証明書の交付もできる

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html

検認不要となる

死亡後には、「関係遺言書」(請求者が相続人・受遺者等となっている遺言書)が,遺言書保管所に保管されているか否かの有無を確認することができる

保管した関係遺言書の写し等の交付・閲覧もできる


(3)遺贈義務者の引渡義務


遺贈義務者は、相続開始時(不特定物は特定の時)の状態で引き渡し・移転すれば足りる。

遺言書が別の意思表示をしたときはその意思に従う。


(4)遺言の撤回の撤回


錯誤による意思表示が無効から取消の対象にとなったため、撤回の撤回が認められる場合に錯誤も含めた。


(5)遺言執行者の権限の明確化


相続人の利益より遺言者の意思に従って職務を行えばよいことが明確化
遺言執行者に対抗要件具備権限、預貯金債権の払戻し及び解約の申入れをする権限を付与
遺言執行者は任務開始後遅滞なく遺言の内容を相続人に通知しなければならない
遺言執行者がいる場合の遺言に反する行為の効果、遺言に反する相続人の行為は無効,ただし善意の第三者は保護される(相対的無効)。
相続人の債権者は遺言執行者がいても権利を行使することができる

(6)遺言等による承継の対抗力法


法定相続分を超える部分の遺言等による承継は,登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができない



4 遺留分制度


(1)遺留分に関する権利が金銭債権(遺留分侵害額請求)

遺留分侵害侵害額に相当する金銭を請求できる(1046条1項)

請求された側は、裁判所に相当期限の許与(猶予)を求めることができる(1047条5項)。

(2)遺留分侵害額の計算方法が明確化

遺留分

(相続時における被相続人のプラス財産の額)+(相続人に対する生前贈与の額(原則10年以内※1))+(第三者に対する生前贈与の額(原則1年以内※1))−(被相続人の債務の額)×(2分の1※2)×(遺留分権利者の法定相続分)

※1 当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知って贈与等すれば無制限
※2 親などの直系尊属のみが相続人である場合は3分の1、兄弟姉妹はなし

負担付贈与は負担部分を控除して計算される。
売買等の形式でも不相当な対価によるものは、当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってしたものは含める。

遺留分侵害額
(遺留分)−(遺留分権利者の特別受益の額)−(遺留分権利者が相続によって得たプラス財産の額)+(遺留分権利者が相続によって負う債務の額)


(3)相続債務の弁済との相殺
相続債務を受遺者または受贈者が弁済等により消滅させたとき,受遺者らが遺留分侵害額請求権にかかる債務の消滅を請求できる

5 相続人以外の者の貢献を考慮(特別寄与)


@相続人以外の被相続人の親族※が,

A被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより

B被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした

相続人に対して寄与に応じた額の金銭請求をすることができる。(1050条)

※相続人、相続放棄をした者、欠格事由該当者、廃除された者を除く


家庭裁判所に対して協議に代わる処分の請求を、相続の開始及び相続人を知った時から6か月かつ相続開始の時から1年以内






posted by まんさく at 20:04| 東京 ☀| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする