2015年10月05日

ベネッセ事件・過失論(準備書面)

シルバーウィーク明けくらいを想定していましたが,
遅くなり申し訳ございませんでした。

さて,
被告らから,「過失」について請求原因事実を明確かつ十分に主張するようにとの主張が出ていたので,
対応する準備書面と証拠説明書を作成してみました。

第3準備書面ベネッセ公開用.doc

証拠説明書ベネッセ公開用2.xls

証拠については,ガイドラインやインターネットの記事ですので,探していただければ見つかると思います。



内容について,少し説明しますと
まず,本件で請求している不法行為に基づく損害賠償(責任)というのは
「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」(民法709条)というものです。

原告が主張立証すべきなのは,
    条文              本件で対応する事実
@ (故意又は)過失によって → 被告らの「過失」
A 権利や法律上の利益の侵害 → 個人情報が漏れて原告らのプライバシー権が侵害されたこと
B これによって生じた    → AによってBが生じたこと(因果関係)
C 損害           → プライバシー権の侵害による精神的苦痛,金銭的評価

ABCは本件ではかなり明らかなので(損害額の問題はあるにしろ),
問題になるのは@の被告らの「過失」です。


「過失」って何?何を主張・立証すれば良いのか?ということですが,

過失というのは,通説によれば
内心の意思緊張の欠如,すなわち,ぼーとしてたとか注意散漫だったとか内心・内面の問題ではなくて
行為義務の違反,すなわち,するべき行為をしなかったという客観的な事実の問題なのです。

そして,するべき行為というのは,結果を回避させる行為ですが,
そのような結果を回避させる義務を負わす前提として,
当然結果を予見(予想)できないといけません。(予見できないのに結果を回避する行動をとれというのは無茶です。)

要するに過失とは,結果を予見できたのに,結果を回避するような行動を取らなかったということになります。
過失=「予見可能性を前提とした結果回避義務に違反した行為」ということです。

そして,「過失」において,主張・立証すべきなのは,
抽象的な予見可能性とか結果回避義務違反などではなく(抽象的な立証は難しい)
予見可能性や結果回避義務違反があったと認定できるだけの具体的事実(過失の評価根拠事実)になります。

そういうわけで,上記の第3準備書面を書いたわけです。
第3準備書面で主張した事実を基にすれば,
被告らが,予見可能性を前提とした結果回避義務に違反した行為をした,
すなわち,結果の予見が可能であったのにその結果を回避する行為を行わなかったということになり,
過失が認められることになるのです。

被告らの主張では,医療訴訟における水準論のような話(当時の一般的なセキュリティ水準を保っていれば過失は認められず,その水準については原告が主張立証すべきだ)も出ていますが,
これは,本件では妥当しないと考えています。
理由は上記第3準備書面でも書いたとおりで,水準論は医療という特殊な事案のみでの話で,
他人の個人情報の管理などをやっていて,一般的なセキュリティ水準を守っていれば,一般的なセキュリティ水準自体に問題があって個人情報が漏えいしても,企業が責任を追わないというのは不当です。
赤信号はみんなで渡ろうが,一人で渡ろうが,違反になるのです。

ただ,上記で「結果」を予見と書きましたが,
この「結果」は,どこまで具体的に予見しなければいけないのか難しいところです。
漠然と「個人情報が漏れるかも」という予見では少し不十分な気もしますが,
誰がいつどのような方法で入手してどのように流出させるかまでの具体的な予見は不要でしょう。
最終的に裁判官の判断にはなりますが,こちらもできるだけ主張・立証をしていきたいと思います。

本日はこの程度で,後で加筆修正をする可能性もあります。
posted by まんさく at 22:15| 東京 ☁| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月07日

第5次訴訟 募集のお知らせ(ベネッセ個人情報漏えい被害対策弁護団)

ベネッセに対する集団訴訟(第5次訴訟)の募集を開始いたします。
締め切りは平成27年10月31日必着となっております。

詳しくは,こちらhttp://vsbenesse.exblog.jp/を参照です。

必要書類の書式のダウンロードが少し手間取るようなので,
PDFでこちらにも置いておきます。
matome 150901s.pdf

忘れずに募集要項http://vsbenesse.exblog.jp/20595892/もお読み下さい。
posted by まんさく at 11:23| 東京 ☁| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月20日

遺産分割や共有物分割での経済的利益とは

ベネッセの件は,淡々と進んでいます。
また,次回期日が来週にあるので,その時にご報告いたします。


さて,たまにはベネッセ関連以外のお話。弁護士報酬のお話です。
とある事件で裁判官から疑問を呈され,
いろいろ調べたのですが,インターネット上ではあまり書かれておらず,
書籍でやっと納得する解が出たので,ご紹介します。


そもそも,紛争解決型の弁護士の費用(支払う報酬)は,
着手金・成功報酬制と時間制(タイムチャージ)に大きく分けられると思います。

タイムチャージは,1時間いくらで,(何人×)何時間かかったかで費用が決まります。

着手金・成功報酬型は,事件の「経済的利益」の○%とかで決まっています。
(参照:http://kasai-law.com/cost/index.html

それで,この「経済的利益」というのは,損害賠償などだとわかりやすくて,
・損害賠償請求する場合
何円請求するか(着手金計算時),何円勝ったか・受け取ったか(成功報酬計算時)
・損害賠償請求を受けた場合
何円請求されたか(着手金計算時),相手の請求から何円減額したか(成功報酬計算時)
で,決まります。

ここで,問題なのは,持分・相続分(相続割合)に争いのない共有物分割・遺産分割のときです。

例えば,全部で1000万円の不動産や遺産があって,2分の1ずつの割合で持っていることは,互いに争いがない。
これを,どう分けるかについて,弁護士に依頼し,無事に分けて,2分の1を現金などで得られたとして,
「経済的利益」はいくらなのか,という問題です。

第二東京弁護士会の旧報酬規定やうちの事務所や多くの法律事務所の弁護士報酬基準でも,
経済的利益を「対象となる持分(相続分)の時価の3分の1の額」と定め,着手金及び成功報酬の算定基準としています。

これは何故でしょうか。
互いに持分を認めているのだから,それを分けて受け取っただけだから,経済的利益は0ではないのか,という疑問が当然ありえます。

しかし!
持分に争いのない共有物分割請求事件(遺産分割請求事件)において,
訴訟手続き等で確定されるもの(得られるもの),すなわち経済的利益は持分ではなく,
持分の具体化なのです。
当然確定前でも依頼者は持分を有していますが,これは使い勝手が悪く,
それを具体化するのが,分割請求事件なのです。

具体化(分割)された場合の経済的利益として,
共有から単独所有になるので,実際に使用権を得るということで,占有保持の訴えとパラレルに考え,
(占有権も所有権とは別に使用する権利)
3分の1の額としているのです。

したがって,依頼者が持分を既に有し争いのない共有物分割請求事件においても,
訴訟手続き等により,具体的に持分を確定したときに,
確定した持分の3分の1を経済的利益となるので,
着手金・成功報酬が発生するのです。



参考文献:日本弁護士連合会調査室編著「弁護士報酬規定コンメンタール」(第1版)
posted by まんさく at 17:06| 東京 ☀| 法律豆知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする